2016年10月4日火曜日

病院をどうやって選ぶのか? - 因果関係と前後関係

(この記事は一般向けではなくて、特定の記事への異論として書いているので、その記事を読んでない人が読んでも面白くないと思いますので、飛ばして下さい)

先日、「健康は命より大事」 – 実践編 – - Kwappa談話室という記事が流れてきて、非常にもにょもにょしたのですが、一週間以上経過しても心のもにょもにょが収まらないので異論記事を書くことにしました。

この記事を書かれたのは私と同じソフトウェア業界の方であり、共通の知人が納得したようなブクマをつけていたので、まあ、ここは一つ異論を言ってみても何かの参考になるかもしれんと思ってます。

この記事は、「高熱が出て数日間寝込んだ→大学病院に行って徹底検査を受けて抗菌薬の静注を受けた→治った→なので数日間寝込んだら大学病院に行くべき」という記事なのですが、端的にいってものすごく因果関係に疑問がある記事だと思われます。

私は医師でも医療関係者でもないので、病気や治療や検査についてはわかりませんが、単純に論理的誤謬がはなはだしいにも程があると思いました。

具体的に以下のような疑問が生じます。

  1. 抗菌薬を静注投与したことによって回復への道のりは短縮されたのか? ただ家で寝ているだけでは本当にいかんかったのか?
  2. 大学病院に行かなければいかんかったのか? 近所の医者では本当にいかんかったのか?
  3. 仮にこのケースで大学病院に行ったことが最善であったとして、それは他の読者にとって一般化できる法則なのか?
人間の身体は複雑であり、外部から観察した場合は、あくまで確率的な推定を置くことができるだけです。だから今回のケースについて、著者が間違った行動をしたということは言えませんが、かといって近所の医者の判断が間違っているということも言えないわけです。

なぜか著者は、もし近所の病院に行ったら治っておらず、大学病院に行ったことがとても良かったという断定をしており、それが一般的な事例に適用できるとして他人に大学病院に行くことを極めて強く勧めているわけです。そこには何の論理的裏付けもありません。ここが大変もにょもにょする所です。

実際には、著者は近所の病院には受診しておらず、電話で看護師と話したにとどまります。また近所の開業医を受診して血液検査を受けたというが、再度受診して結果を聞いたのかもわかりません。後医は名医という言葉がありますが、最初は単なる風邪程度と思っていても、時間が経てば重大な病気かもしれないという疑いが増えてくるわけです。 

これらの事象では、何の因果関係も明白ではないし、相関関係すら明らかではないのに、それでもって「絶対に大学病院へ行け」と断言してしまうことに非常に不思議な印象を抱きました。

著者は、大学病院にいって隅から隅まで検査してもらって、入院して抗菌薬静注を受けたことですっかり納得したようですが、実際にはそれは過剰な検査や治療だったということも可能性としてはあるわけです。もしも小さな病医院に患者を軽症だと見なすバイアスがあると言うならば、大きな病院には患者を重症だと見なすバイアスがあるということも逆に言えるわけです。(実際にそのようなバイアスがあるかどうかは知りませんが)

有名なプログラマである著者が、なぜこのような単純な誤謬を犯すのか、不思議でなりません。


もちろん、どの医師を受診するかということは、とても重要な問題であり、情報が少ない問題でもあると思います。

医師や医療団体が「患者はどのような心構えでどのような医療機関を受診すべきか」に対して、一貫性があり誠実な情報開示をしていないように私には感じられます。

医師は、ときには「風邪のように見えても危険な病気が隠れている場合があるから自己判断せずに早い受診を」というようなことを言う一方で、「救急外来は疲弊しているから、軽症で受診するな、軽症で救急車を呼ぶな」などということを言ったりします。はっきりいって「じゃあ軽症とは誰がどのように判断するのか? 軽症かどうか患者が判断できるなら医者いらんわ!」としか言いようがないと思いますね…。

このような一貫性のない情報を垂れ流すのではなく、「どのような症状のときに、どのような医療機関をどのような基準で選定し、いつ受診して、どのように訴えをすればいいか、それからの検査や治療の流れはどのようになるか」ということをまとまった情報として提示すべきでしょう。

そのなかで「病院受診マニュアル」というブログはなかなか良い情報を提供していると思いました。ブログとして雑多な記事で埋め尽くされているので、実際に医者を探している人にとってはちょっと読んでる暇ないよ、という感じだと思いますが…。

このような本音ベースで、病院を受診するためのマニュアルが、ひとまとめに読みやすくなれば大変需要があると思うので、誰か作ってもらえないものでしょうか?

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