2012年12月29日土曜日

いまこそ日銀法改正でデフレ脱却のとき

自民党の安倍内閣に変わりましたが、彼らに期待することはとにかくデフレ脱却により経済を回復させることです。

ウェブ上では、10年くらい前から山形浩生らのリフレ論者が、インフレターゲットによるデフレ脱却を主張してきましたが、リーマンショック以降、英米欧がリフレ策を取り始めたことにより、ようやく日本でもインフレ目標が真剣に検討されるようになりました。

デフレとは持続的に平均物価が下がっていく現象のことです。すなわち現金の価値があがっていくということです。

平均物価がさがっていくと、以下のような弊害が起こります。

1. 現金の価値があがっていくということは、来年の1万円は現在の1万円よりも価値があるということです。1万円を借りて来年に1万円を返す場合には、金利を払っているのと同じことになります。この場合は名目金利は0%ですが、実質金利はデフレ率と同等になります。名目金利は0%以下にはなりえないため、デフレ下では実質金利が高止まりするために、企業や消費者は現金を持ちたがり、設備投資などを手控えることになります。そうなると現金は死蔵されて使われなくなり景気が悪くなります。

2. デフレによって物価が下がっても、正社員の給与などは急には下がりません。そうすると、相対的な人件費が高くなり、人件費負担が大きくなるために利益が逼迫されます。そのために全体の人件費を抑制する必要が生じて、失業者や期間労働者などにしわ寄せがいきますし、企業の投資が手控えられたり、正社員の解雇が行われたりすることになります。逆に安定して高給与を保証された正社員や、現金を主に所有する資産家には有利になります。失業者やローンを抱える弱者にしわ寄せがいくという点でデフレの弊害があります。

3. デフレ下では総供給にくらべて総需要が少なく、設備や人材などの生産力が遊休状態にあります。これは産業の効率を下げたり、失業の原因となります。すなわち本来なら働けるのに、無駄にされる生産力があるということです。生産力がすべて使われた状態に比べて、経済の成長力が阻害されることになります。高齢化して社会保障費が増大する日本にとって、経済成長することはきわめて大事なことです。

4. デフレであれば、通貨の価値が上昇するので、他国に比べて通貨高となります。通貨高は輸出企業の業績を悪化させ、輸入を増大させるので、日本の経済を悪化させ、総需要は一層低下します。

そのため経済にとっては、年率2%程度物価が上昇する、ゆるやかなインフレが望ましいと考えられています。

デフレの原因については、バブル崩壊やリーマンショックなどの資産価格下落により需要が一時的に下落すると、それによりデフレが生じて設備投資や消費などが手控えられます。それにより需要が下がり、さらなるデフレを引き起こすというデフレスパイラル論がよく言われます。

原因がどうであれ、デフレやインフレなどの物価水準の変動をちょうどよい水準に保つことは日銀などの中央銀行の責務です。

日本ではデフレが20年も続いており、それが深刻な不況や失業や円高などの原因の一つと考えられています。

デフレを退治する方法はシンプルであり、インフレ目標に従って、日銀がお金を刷って様々な資産を買い続ければよいのです。それは物価がほどよく上昇する程度でやめるのですから、それによってハイパーインフレになる恐れもありません。

日本のようにデフレ下で債務が大きい状況では、公共事業の増大などの財政政策の効果は限定的であると考えられます。公共事業の増大は、増税や、債務を増加させ将来の増税をもたらしたりするため、それだけ企業や消費者の需要を低減させるからです。公共投資を行うなら、老朽化したインフラの更新など、将来の税負担を先食いするようなものが良いのではないでしょうか。

またデフレ不況下で増税を行うことは絶対に避けるべきです。増税した分だけ需要が低減して、税収の低減を招くために、政府財政の改善につながりません。

デフレを退治するためには、日銀法改正が一番です。

政府が政治的圧力で日銀を脅かして従わせたように見えても、実際には日銀は裏で舌を出して、金融緩和策を骨抜きにするでしょう。自主的にインフレ目標らしきものを設定したとしても、実際にはそれを達成するための行動はとらず、デフレが続いても何の責任もとらないのではないでしょうか。これまで日銀はずっとそのような行動をとってきましたから。

日銀をきちんと従わせるためには、日銀法を改正して、インフレ目標を政府が設定できるようにして、もしそれが達成できなければ日銀総裁の解任などの政治介入が行えるようにすべきです。

政治的圧力というもやもやしたもので金融緩和するよりも、きちっとしたルールにもとづいて金融緩和するほうが、通貨の信認という観点からも望ましいのではないでしょうか。

安倍内閣に期待することは、とにかくそれだけです。全力で頑張って頂きたい。

参考文献

2012年12月8日土曜日

右傾化した自民党に政権を渡すのは危険だ

新井です。

政治的発言をして個人的に良いことなど何もありません。本人に政治色がついてしまい、反対派の人達を遠ざけることになるからです。

だからといって賢明な人たちが誰も政治の話をしなければ、この国はどうなってしまうのでしょうか? 愚かで声の大きい人たちが政治を牛耳ることになりますよね。

というわけで、私はここでもどんどん政治の話をしていきます。

さて、次の選挙の話ですが、色々と争点はありますが、私にとって最も注目しているのは、自民党の著しい右傾化と、維新の会などの右派勢力の伸張です。

「右派」という言葉には色々な意味がありますが、本記事では「政府による社会統制の強化」と言った意味で使うことにします。

自民党は政権にあった頃よりも著しく右傾化しており、いまや実質的には右翼政党となっています。

それは彼らの発表したこちらの憲法の改正案を見れば明らかです。こちらのウェブサイトは、左派寄りの見方ですが、自民党改憲案のどこに問題があるかを解説しています。

とくに私が問題だと思うのは第二十一条(表現の自由)に「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」という項目を追加したことですね。

(表現の自由)
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない
これは戦前のような言論弾圧を可能とするものであり、自民党がどのような政権を目指しているかが如実に表れている文言です。

さすがに、いくらなんでも、こういうことを言っている人たちに政権を取らせてはまずいだろう、と思いますよ。

片山さつきのようなネット右翼が政界に飛び込んだような人[1][2]要職につけるつもりのようですし。片山さつきのtwitterでの発言をみてもわかるように、このような人が政権に入るのは極めて危険です。

自民党が日銀法改正に言及していることはデフレ対策の点から見て素晴らしいことだと思います。日銀はこれまでひどい仕事をしてきましたから。しかし、自民党の右傾化はきわめて危険であり、自民党を応援するわけにはいかないなあ、と思います。

言論の自由を失いたくない人は、なんとか穏健派の勢力を勝たせるべく頑張りましょう。投票したい政党がないのは事実ですが、このさい民主党でも共産党でもなんでもよいので、とにかく投票に行きましょう。個人的には「みんなの党」の経済政策にはわりと共感するのですが、彼らが右派勢力と連立する危険性が怖いですね。

「強い日本を目指すんだ!」という人もいるかもしれませんが、強い日本というのは自由なイノベーションから生み出される豊かな経済からしか生まれないのではないでしょうか。日本が中国に軍拡競争を挑んでも無益ですよね。

強い日本を生み出すのは、自由な社会によって生み出される科学技術とイノベーションだけだと思います。残念ながら日本には自由主義の政党というのがありませんが、統制主義政党にだけは政権を握らせてはならないと思います。統制主義は、時代遅れの規制によって、日本の経済や文化を滅ぼします。


ヒトラーは選挙で政権についたということをお忘れ無く。


参考情報:

  1. 朝日・東大谷口研究室共同調査:第46回総選挙:朝日新聞デジタル
  2. 各政党の政策を知ろう|「選挙に行こう」キャンペーン - 新経済連盟

2012年12月1日土曜日

選挙期間中にネットで政治を論じても違法ではない

選挙になると、ネットなどでどれだけ政治的発言をしても良いのか、ということが話題になります。

大阪弁護士会の壇俊光弁護士に問い合わせた結論から言うと、選挙期間中であっても選挙関係者以外は自由に政治的な発言をできるということです。

以下に壇俊光弁護士とのメールのやりとりを掲載します。


・新井

選挙期間中やそれ以外の期間でも、
ネットでどういう行為を行うと公職選挙法違反で犯罪になるのか、
どのあたりがグレーゾーンで、どのあたりがセーフなのか、
それについて解説して頂きたいなと思っています。

現状だと、どこまでがアウトなのか、みな分からず、
選挙が公示されたらとりあえず政治については黙っておこう、
みたいな状況になっていると思い、それはまずいと思うんですよね。

評論ならいいのか、評論でもダメなのか、などなど。
応援するのはダメなのか。○○に投票する予定というのはどうか、など。

・壇

結論としては、政治活動に該当しなければとくにいいというより、
金をもらっていなければ、何しても良いというのが基本です。

選挙活動: 特定の選挙につき特定の候補者または特定の立候補者予定者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為をすること

選挙活動は、公職選挙法上の規制あり。

政治活動: 政治上の主義、主張、若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持し、若しくは反対することを目的として行う直接間接の一切の行為

政治活動は、公務員等でない限り特に規制ありません。

これに書いてますなぁ。
http://www.jsdi.or.jp/~y_ide/9610saki_qa.htm

で、実務ですが、政治活動と選挙活動の境目が難しいので、
関係者か、金をもらってなければ、まず大丈夫です。


ということで、実務的には一般の方が選挙期間中に政治について論じたところで、選挙違反と見なされることは考えにくいというご見解です。皆さん、安心して政治を論じましょう。

ただし特定の候補者への投票依頼を行ったり、明確に特定候補への支持を表明することについては注意が必要です。(公職選挙法、第百四十六条を参照)

現在の公職選挙法は不必要に禁止事項が多すぎて、公正な選挙をかえって阻害しているものであり、抜本的な改革が必要だと思います。

現在の公職選挙法では、ほとんどまともな選挙活動は行うことができず、著名人や地元の有力者などが有利な、不公正な制度になっていると思います。

単に「ネット選挙解禁」だけでなく、公職選挙法の抜本改革や、選挙公報の紙面の拡充(増ページ等)などを通じて、きちんと候補者に関する情報がうまく流通する制度とすべきです。また選挙カーのような有害無益な存在こそ禁止すべきです。

日本の法律は何でも「禁止禁止!」であり、日本の法制度全般を抜本的に改正して、規制を圧倒的に緩めることが必要なのではないでしょうか。それこそが日本の繁栄につながります。